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寝屋川市長から弁明書:住民の異議申し立てをすべて否認

 前回までに2004年4月から始めた署名活動(6月に8万数千筆を寝屋川市の馬場市長に提出)や、5月に行ったシンポジウムの内容を紹介した。「廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会」(以下「守る会」)はこれらに続き、リサイクル・アンド・イコール社(以下、イ社)の廃プラチックリサイクル施設を操業させない仮処分を、大阪地方裁判所に申請した。この申請は翌年、2005年3月31日付で却下された。また同じく2005年3月に4市(寝屋川市、枚方市、交野市、四条畷市)都市計画審議会や4市組合の専門委員会で、4市廃プラスチックリサイクル施設が承認された。そして4月からはイ社の本格操業が始まってしまった。異臭だけでなく、多数の住民に目や喉の痛み、湿疹などの健康被害が発生した。

 

 上記以外にも「守る会」は弁護士とともに2004年4月26日、寝屋川市長に対し建築許可・開発許可に対する再審査請求を行った。それに対する馬場市長の弁明書が5月31日付で「守る会」に届けられた。会の主張をことごとく否定する市長の弁明書の要点と、それに対する「守る会」の反論を次のようにまとめ、6月に建築審査会・開発審査会に提出した。また「廃プラウオッチングニュース」にも載せて公表した。 以下、数字に続く文章が市長の弁明書の要点で、その下に「守る会」の反論を記した。


1.建築許可にあたって建築基準法第51条(注:廃棄物施設など特殊施設の新増設には都市計画決定が必要であり、その場合、事前の計画縦覧、住民からの意見提出をもとめることが義務づけられている)の「ただし書き許可」すなわち、「住民説明会を行う」とする都市計画決定の手続きを取らず、市長権限で都市計画審議会を開く許可方法を選択したことは都市計画法の精神に反しないし、違法ではない。

 

反論:工場の立地は、都市計画法で開発を抑制する地域とされている市街化調整区域であり、水田や竹林など貴重な都市の緑空間を減らすものである。環境保全、住みよい街づくりという都市計画法の精神に反する。

 

 

2.杉並病の原因裁定は否認する。

 

反論:国の公害等調整委員会が認めたことを認めないとする根拠は何か、具体的に示すべきである。

 

 

3.プラスチックの機械的、熱的処理から化学物質が発生するとする請求人(=「守る会」)の主張には学術的根拠がない。

 

反論:プラスチックを圧縮、摩擦するなどの機械的処理や加熱すればプラスチック(高分子物質と添加物などでできている)が壊れ、ガス化した化学物質などが発生することは学術的にも十分証明されている。市長がこれを否定する根拠資料を示されたい。

 

 

4.たとえ廃プラから化学物質が発生するとしても法的基準がないから、危険だと判断できない(だから許可した)。

 

反論:いったん廃プラスチックのリサイクル施設から化学物質は発生しないと断言しておきながら、発生した場合基準がないからとの見解は納得できない。


 寝屋川市の建築審査会、並びに開発審査会は「守る会」の主張に一定の理解を示しつつも、結局は市の行政機関として市長の決定を容認する決定を行った。

 

 市長の弁明にある「ただし書き許可」や「法的基準がないから、危険だと判断できない」などは、国の法律の不備を表わしている。この状況は当時から17年経った今も、あまり変わっていないのではないだろうか。住民の健康を守る、緑を守る街づくりの法的制度は、未だしの観がある。