· 

「操業差止」を求めた仮処分申請の意義

 2つの廃プラスチック処理施設の建設を先導した寝屋川市長は、住民の8万数千筆の反対署名にかかわらず事業推進を固執した(2022年11月26日記事)。「廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会」(以下「守る会」)は弁護団の提案により、試験操業が9月に迫ったリサイクル・アンド・イコール社(以下、イ社)の操業差止の仮処分申し立てを2004年7月1日に大阪地方裁判所に行った。申請した住民は645名に及んだ。前回記事で紹介したように、弁護団の村松弁護士は仮処分申請の意義について「施設が操業されると住民の健康に被害が及ぶという緊急性を要したことから、廃プラスチックリサイクル施設を操業させない仮処分を申請した」と述べている。

 

 大阪地裁はこの仮処分申立てについて、2005年3月に判決を下した。その際、次のように述べている。

 

・申し立ての趣旨は、廃プラリサイクル会社であるイコール社は廃プラスチック処理及びパレット等製造工場の操業を、仮に行ってはならない、ということである。

 

・本件事案は、申立てた住民が「2005年4月操業開始予定のイ社が操業によって住民の人体に悪影響を与える有害化学物質を発生させ、住民らに受忍限度を超える健康被害を生じさせる高度の蓋然性がある」と主張し、住民らの人格権に基づき、本件施設の操業の禁止を求めた仮処分事件である。

 

・争点として①住民に申立てによって住民の利益が認められるかどうか。②イ社の操業によって住民の人体に悪影響を及ぼす程度の有害化学物質が発生するか否か、について審査が行われた。

 

 上記については我々(守る会)と同じ見解である。しかしながら裁判所は、住民の申し立てを却下したのだった。

 

 実は寝屋川病関連ではこの仮処分を含め3回の裁判(仮処分、1審、2審)及び公害等調整委員会(公調委)の原因裁定の全てにおいて住民の健康被害の訴えが退けられた。仮処分判決はその嚆矢であった。2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法では、廃プラスチックのリサイクル対象を、容器包装材限定からその他の廃プラチックまで広げたものとなっている。今回の仮処分やその後の寝屋川病関連の裁判で見られた「司法と行政による一貫した健康被害の否定」が、この法律を後押ししたと我々には思われる(=健康被害への懸念が全くない)。

 

 この仮処分に関する裁判での住民側の主張の一部は、「廃プラ施設の何を懸念していたのか(1)」(2023年1月27日記事)「廃プラ施設の何を懸念していたのか(2)」(2023年1月31日記事)でご紹介した。次回はイ社がどう反論し、裁判所がどのような理由で申し立てを却下したかを解説する。